皆さん、そろそろ季節も春めいてきましたが、いかがお過ごしでしょうか。私は、現在選挙準備や、G20に関連した市民活動、その中でも特に市民サイドからG20に向けて行う気候変動対策の提言に、これまでの私の研究成果を盛り込むための活動に注力しています。

折角地球温暖化と闘うための人類の基本政策としてのパリ協定が生まれたのに、トランプ大統領の後ろ向きの姿勢が目立つために、世界の対策が遅れている印象が強いのですが、アメリカでも日本でもかなりムードが前向きに変わってきています。今日は、その変化について述べたうえで、このムードを実際の政策にまとめる上で、これまでの私の提案がどのように役に立つのかについてもお話しします。

英ファイナンシャル・タイムズのチーフ・エコノミクス・コメンテーターであるマーティン・ウルフ氏の報告が2月21日の日経に掲載されていました。その一つ目のトピックスは、FRBの歴代議長4人、ノーベル賞受賞者27人を含む3333人の米国人経済学者が「炭素配当に関する声明」を今年の1月17日に公表したことです。内容は、①二酸化炭素排出量1トンあたり40ドルを課税し、段階的に引き上げる炭素税 ②その税収を原資に炭素配当金を「四半期ごとに米国民に」払う ③CO2排出が絡む輸出入には国境で調整措置をとる ④無駄な規制の撤廃 ---であり、そしてこの提案を「他の主要な温暖化ガス排出国」にも提案していく予定だといいます。

報告の二つ目のトピックスは、2月7日に、アレクサンドリア・オカシオコルテス下院委員と、エド・マーキー上院議員が、共同でまとめた「グリーン・ニューディール法案」を米下院に提出したことです。この法案は米経済を根本から変えるもので、「米国の電力需要の100%をクリーンかつ再生可能でCO2排出ゼロのエネルギー源で賄う」「省エネを徹底すべく米国内のあらゆる既存建造物の改修」「ゼロ排気車や高速鉄道への投資」「温室効果ガスの排出のないクリーンな製造業」などの目標が目を引きます。

マーティン・ウルフ氏は、「炭素配当に関する声明」について、この程度の経済的インセンティブと市場メカニズムを利用する対策は、ほぼ確実に不十分だと指摘し、一方グリーン・ニューディール派の提案についても、経済的インセンティブをつかうという発想がなく、「CO2回収・貯留技術、原発、廃棄物を利用する発電、生物由来の有機資源を活用するバイオマスエネルギーなどの技術的選択肢を含む法制には強く反対する」としているところから、インフラ投資として実現できる部分が果たしてあるのかと疑問を呈しています。しかしながら、ニューディール派が、経済学者のインセンティブや炭素配当金の提案が世論の支持に役立つと気づき、両者のアイデアの組み合わせを行うと、世界展開が可能になるだろうと述べているのです。そして、解決策の考え方に違いがあっても、気候変動が差し迫った脅威だという認識で一致したのは大きな前進であり、アメリカが温暖化対策を主導することにつながると評価しています。

次に日本における進捗です。2015年のパリ協定成立を受けて、いま世界各国で、企業や自治体、NGOなど、国家政府以外の多様な主体(non-state actors)が気候変動対策の中で大きな役割を果たすようになってきていますが、日本でも「気候変動イニシアティブ」という組織が立ち上がりました。

世界的には、企業や投資家の温暖化対策を推進している国際機関やシンクタンク、NGO等が構成する”We Mean Business”に、世界の代表的な企業が600社以上も参加しています。また、連邦政府がパリ協定脱退を表明した米国では、企業、州政府、自治体などが、気候変動対策へのコミットメントを継続することを宣言する”We are still in”に、2,700を超える組織が署名して参加しています。

日本でも、気候変動対策に積極的に取り組む企業や自治体、NGOなどの情報発信や意見交換を強化するため、ゆるやかなネットワークとして、「気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative)」が立ち上がりました。宣言「脱炭素化をめざす世界の最前線に日本から参加する」に多くの企業、自治体、団体、 NGOなどが参加し、その数はこの夏にも数百に達する見込みだそうです。

このJCIが2月12日に開催したシンポジウムに参加しました。パリ協定の締結に中心的な役割を果たした人物の一人、UNFCCCの前事務局長であるクリスティアナ・フィゲレス氏が特別講演をされ、日本の現状について、「日本はこれまで京都議定書の締結などにおいて、主導的な役割を果たすなど、地球温暖化対策に貢献してきたが、現在その立ち位置を明確にできないでいる。日本はこれから世界のリーダーとしての位置を占めるのか、それとも後からついていくのか、それを決定すべき時だ」と厳しいコメントを残されました。そしてパリ協定については「後退することはない。世界の再エネについての投資、再エネの技術革新、化石資源に投資することのリスクの高まり、化石資源を使うことが倫理的でないとされるようになったことなどから、これから再エネによるエネルギー転換と、脱炭素への動きが加速する」と述べられました。

その他、シンポジウムでは、日本の外務省、環境省、経済産業省が来賓挨拶を行ったほか、GPIFの理事で、国連責任投資原則協会の理事でもある水野弘道氏、東京大学の高村ゆかり氏が講演をされました。さらに、ディスカッションの中で、私も在籍した住友化学など企業からも気候変動関係の専門家が登壇し、それぞれの取り組みについてお話しされました。住友化学の河本氏の発言で気になったことがあったので、あとで二人でお話をしたのですが、やはり、「地球温暖化への対応で精一杯の努力はするが、石油資源を原料とするなかで、CO2排出をゼロにするとはいかず、これからどう対応すればよいか、悩んでいる」と仰いました。私は、「製造過程でCO2の排出を最小にすることはもちろんだが、製品の使用、廃棄の過程で、焼却するのではなく、ゴミを炭素の粒子にして取っておく方法もあり、製品の大きな意味でのライフサイクルのなかで、排出ゼロを目指すべきだ」とお伝えしたところ、「是非行政から、そのようなスタンスの提案をいただきたい」と言われました。私は、まだ経済界でも、全ての製造業を全体として捉えて温暖化ガス排出ゼロを目指す取り組みができていないことが残念で、そして危機感を感じました。

さて、ここまでアメリカや日本の状況について簡単に述べてきましたが、今各方面で議論されていることは、私が10年以上前から主張している脱温暖化システムに収斂すべきだと感じています。それぞれの論点について簡単にコメントします。

まず、アメリカの経済学者が行った、「炭素配当に関する声明」については、カーボンプライスが、化石資源使用量の削減のために必要なことは論を待ちませんが、各国で共通の炭素税をつくるよりも、国際的に一つの化石資源を専売するシステムをつくり、そこに資金を集め、国際的に必要な資金を取り除けたうえで、残金を各国の政府に、各国の専売収益の比率でお返しして、その使用法については各国に任せる、というやり方の方が、ずっとシステム的に簡便になり実現性が高いと、コメントさせていただきます。

次に「グリーン・ニューディール法案」については、「投資を行うべきでない分野」については、考えを同じくするのですが、「投資を行うべき分野」については、費用対効果で厳しく絞り込み、地球温暖化対策以外の目的(例えばエネルギー効率を上げることは、手段であって目的でない)を含めないこと、そして、私が主張してきたベーリング海峡ダムや、二酸化炭素除去装置に投資が可能になるよう、一国内の投資ではなく、国際共同的な投資にまで視野を広げるべきだと申し上げたいと思います。

そして、日本の現状については、地球温暖化対策について声をあげる人が多くなったことは嬉しく感じるのですが、気候変動イニシアティブに関してもまだまだ認知度が低く、より多くの人たち、組織のサポートが必要だと感じます。それから、シンポジウムの中での討議で感じたのですが、日本人には「他人あるいは他の企業の活動に不都合なことは言わない」という暗黙の合意があり、「一般的にいわれていること、自らのしたこと」は話すが、それを乗り越えては発言しない、という暗黙の了解がいまだに守られていることは残念でした。少なくとも、自治体や、学者という立場からは、具体的な産業をどう閉じていくかについて発言を行ってもよい、むしろその方が、活動を縮小なり転換すべき業種に適切なアドバイスができると思うのですが、皆さんはどう思われるでしょうか。

今日は、ここまでに止めます。そして、私は仕事として、社会や行政に対し、問題点を指摘し改善させていける立場に戻るために、選挙活動を行おうと思います。これもそう簡単なことではありません。是非皆様の力をお貸しいただきたいと思います。宜しくお願いいたします。