次々に変異した「新型コロナウイルス」

国会やマスメディアでは、いくつかに変異(細かく分けると数千)した新型コロナについて、一括りで新型コロナと呼称し、感染状況や対策について議論を行ってきました。しかしながら、新型コロナの各変異種には、その毒性などに大きな違いがあったのです。京都大学大学院医学研究科の上久保靖彦特任教授と吉備国際大学の高橋淳教授らの研究グループは、次のように、コロナ感染拡大の経緯を説明されており、それを理解するとこれまでの事態の推移が良く理解でき、あるいは今後の対策について考え易くなります。

昨年10~12月に発生していたS型の弱毒性の新型コロナは感染しても無症状か軽症でした。ついでK型が2020年1月頃をピークに日本に入りました。このK型も感染しても無症状か軽症です。その後G型が中国・武漢で発生し拡散しました。上久保教授によると、S型だけに罹患した人はG型罹患時の致死率が上がり、逆に、K型を罹患した人はG型に対する獲得免疫が出来るそうです。

武漢は1月23日に都市封鎖され、欧米各国は2月上旬から中国全土からの入国制限を行いました。一方、日本は対応が遅れ、入国制限を中国全土としたのは3月9日です。すなわち、欧米各国にはS型の新型コロナウイルスは流入しましたが、K型の流入が少ないままG型が蔓延したために多くの罹患者が重症化し、日本を含む東アジアはS型、K型の流入後にG型が流入したので、免疫を持っていた人が多く、感染者、重症者が少ないというのです。日本政府の対応が遅れ、1,2月にK型ウイルスに感染している中国人が日本に沢山入ってきたことが結果的に良かったことになります。

日本人の多くが抗体を獲得していると、順天堂大学医学部免疫学特任教授の奥村康氏は言います。「新型コロナではPCR検査陽性の人でさえ、9割以上は無症状、それは、感染後5日から1週間で抗体ができるから。インフルエンザでは、ワクチンを打っていない人も抗体検査をすれば必ず引っかかる。電車や町中で知らず知らずのうちにかかり、症状がでないうちに治ってしまうためだ」とのことです。この説が正しいとすると、自粛自体が不要になります。

さらに、この6月から東京を中心に増加している新型コロナに関しては「ただの風邪」に近いものではないかと考えさせる研究結果が出てきています。国立感染症研究所の8月の発表によれば、東京を中心に拡大した新型コロナウイルスは、欧州G型からゲノムが6か所変異していたというのです。現在の感染状況、重症者の発生状況などを見て、ウイルスが弱毒化しているのではないかとは言われていましたが、この遺伝子変異がウイルスの弱毒化につながっているのではないかとも考えられます。

旧型のコロナウイルスは4種類あり、風邪の症状を引き起こすとされています。新型コロナウイルスが変異を繰り返して、勝手に弱毒化して、ただの風邪と同じことになってしまえば、とくに最近無策と批判されてきた「Go To トラベル」などの政府の方針に味方することになります。「戦後75年の夏に吹く神風だ」と書いている記事もありました。

しかしながら、現在の新型ウイルスが弱毒性のものであり、社会的警戒が比較的早期に解除できるとしても、この新型ウイルスが再び変異して強毒性の物になる可能性もあります。今後発生してくる患者のウイルスの種類、特性を常に厳格に調べ、小規模地域のロックダウンも含めた効果的な処置を即時にとれるような体制づくりを急速に行わなくてはなりません。また世界的に見るとタイプの違う強毒性の新型コロナがいまだ存在するわけですから、治療薬やワクチンの開発も待たれます。

新型コロナ禍で傷ついた日本の産業、経済、生活をどのように回復させていくか

今回の新型コロナ禍で日本経済を傷つけたのは、死者や患者の発生そのものではなく、あるいは大変な負荷がかかった医療システムでもなく、法的根拠の不透明な自粛要請でした。経済活動がストップ、あるいは縮小すると、多くの企業や個人に「お金が回っていかない」事態が生じます。昨年末から消費税増税などもあり、経済の落ち込みは激しいものがありました。それに加え、今回のコロナ禍ですから、この夏を乗り切れないで多くの商店が閉まり、企業が倒産していくでしょう。報道されない個人の悲劇があちこちで起こっているに違いありません。そして、この間の政府の対応ではっきりしたのは、パンデミックへの対応だけでなく、国民の窮乏に対する国の救援システムが非常に不十分であったことです。そういえばアベノミクスがだんだん効力を失っていったのも、個別の企業や人にまで資金を循環させることができないことが原因でした。

個別の経済主体間のお金の流れ、個別の消費や投資を回復するには、国の救援システムを改善することも必要ですが、海外のように減税、とくに消費税減税を行うことが効率的であり、効果的であると考えます。また、投資の回復も必要です。今回激しいダメージを負った観光産業への補助だけでなく、コロナ後の世界を見据えて社会の形を変えるような投資のパッケージを打ち出していかなくてはなりません。

世界では、すでに新型コロナの終息を前提とした活発な議論がなされ、その中で、SDGs(持続可能な開発目標)に対する注目度が高まっています。欧州ではコロナ禍後の経済復興政策において地球温暖化対策を最優先する「グリーンリカバリー」が打ち出されました。日本を含めて、この流れを無視した企業経営はもはや成り立ちません。そして、コロナ禍によってダメージをうけた日本の財政にも、経済の回復後には手当をしていかなくてはなりません。私は、消費税をいったん下げた後、それを再び増税するのではなく、適正な炭素税を導入することにより、日本で立ち遅れている各産業分野の地球温暖化対策を前に進めることが出来ると考えます。もう少し長期的視野で見た場合は、シルバーマネーの導入による社会保障システムの抜本的改革が適切だと思います。

地球温暖化に関連し、新しい本を書きました。この本の内容と重要性については稿を改めてお伝えしようと思います。皆さん。まだ大変暑い夏が続きますが、どうかお元気でお過ごしください。

令和二年8月20日
 山口克也