◆ 吹田市議会における質問
(平成26年3月議会 個人質問)

●吹操跡地は医療のナショナルセンターになりえるのか
私は昨年9月議会において、市長、あなたは国循を現地から吹操跡地へ移転する前提として、国循が千里ニュータウンにおいて果たしてきた役割と、吹操跡地のまちづくりの夢の重要性を慎重に比較衡量したのかという質問をしました。その際、市長からは、国循の千里ニュータウンにおける精神的支柱としての役割を認識していたという答弁は得られませんでしたが、私は、その際、これまで国循が千里ニュータウンで果たしてきた役割がいかに大きなものだったとしても、吹操跡地における夢が非常に大きなものであれば、市長がそちらを優先する判断をすることを理解できるとは申し上げました。

あれからさらに半年がたちましたが、本日は、市長が今回の施政方針で述べられたように吹操跡地で千里ニュータウン開発以来の華々しいプロジェクトが花開く可能性があるのか、あるいは開発が失敗し、吹田市が膨大な負債を抱えてしまうことになるのか、将来に不確定性があるなかで、吹田市がどのような根拠でこの開発にポジティブでいられるのかお伺いしたいと思います。

まず、先日の特別委員会で配布された資料を議員の皆様にもお持ちいただいていると思いますが、今回の開発用地を簡単に説明致しますと、緑のふれあい交流創生ゾーンIに公園と、太陽光発電所が各1ha計画されており、緑のふれあい交流創生ゾーンIIが1.4haありますが、ここはまだ、JR貨物が将来図を描けていません。そして市民病院移転用地、ここは吹田市の所有となりましたが1.8ha、その隣にURが医療クラスターを支援するための、商業施設や調剤薬局などを募集する予定の土地が0.8haがあります。広場をわたって国立循環器病研究センター移転用地が3.1haあり、3月末にURから国循に引き渡されます。この東側が摂津市の土地で3haあり、摂津市は都市型居住ゾーンとして開発するとしています。その北側が4.5haの正雀下水処理場跡地で、そのうち約4haを吹田市が所有し、8から13区画、それぞれ三千から五千平米に割って、研究機関の進出用地として定期借地として賃貸しようとしています。

すなわち、吹田市がしようとしていることは、事業用地の造成と企業誘致であり、これを行うために国循の誘致とともに、国際戦略総合特区という付加価値が必要だったのです。

ところが、吹田市のこの戦略が成功するためにはいくつかのハードルがあります。まず一つ目は、摂津市の用地が住宅用途に開発されるのであれば、吹操跡地が一体として特区に指定されることはないということです。これはどういうことか、摂津市の意思と、今後の対応について市からご説明ください。

そして、二つ目のハードルは企業誘致において競合する地区が近くにいくつもあるということです。例えば神戸の先端医療産業特区があります。ポートアイランドの医療センター駅周辺には、理化学研究所、発生・再生科学総合研究センターのオープンを皮切りに先端医療センターなどの公的機関が次々と開設され、神戸学院大学や兵庫医療大学といった医薬系学部をもつ大学が開設、民間企業の集積も進み、2011年6月現在で14の研究関連施設と200以上の医療関係企業が進出しています。そして近年梅北のグランフロントには関西メディカルヘッドクオーターができ、なんと関西国際戦略総合特区の事務局までそこに入りました。創薬・医療機器・再生医療などのグローバルビジネスのサポート機能が充実しています。そしてもう一つ北大阪には大阪バイオ・ヘッドクオーターがあり、彩都ライフサイエンスパークがすでに立ち上がり、さらなる開発整備を行なおうとしています。今、国循の誘致に成功したとしても、今後これらの競合地区に対し、吹操跡地はどのように研究拠点としての優位性を持ち企業を誘致することができるのでしょうか、お答えください。

さらに第三点として、吹田市にはこれまで大規模な企業誘致の経験がないという問題があります。企業誘致を本当にやりきることができるのか、吹田市の見通しをお話ください。
そして、吹田市民病院の吹操跡地への移転も、この医療クラスター創生事業の一貫だったと考えると、この医療クラスターづくりに吹田市は途方もない金額を投資することになりますが、いったい吹田市はこの事業全体にどのくらいの資金を投入し、それを企業に賃貸することでどのくらいの収入を得るつもりなのか、われわれ議会はまだ説明を受けていません。ビジネスプランとして成り立っているのかご説明ください。

このような見通しのなか、吹田市は本当に千里ニュータウンにおける国循の役割と価値を消滅させてまで、このプロジェクトを進める必要があるのでしょうか。お伺いします。

●独法化し、建替えを終わったあとの市民病院の行く末
議会がいただいている市民病院の中期計画には、資金計画が平成29年度までしかなく、新病院建設が市民病院の財政状況に与える影響が表れていません。長期的な損益の予想があるのは市民病院の在り方検討特別委員会に出された資料で、お手持ちのグラフのある資料ですが、市民病院の建替え後、病院は平成30年には25億、31年には9億という大きな赤字を出すが、平成36年には黒字転換し、平成56年には累積赤字も消えますという、我々の心臓に負担をかけないような表現になっています。

しかしながら、この表からは新病院の建て替えが吹田市の財政に与える影響を読み取ることはできません。市民病院の平成30年度における借入金は約210億円、この年の借入金の返済は元金8億6338万円と利子3億4724万円で、合計12億円になります。吹田市は通常ベースの繰入金約15億円とあわせ、この年には市民病院に対し、27億円を出資しなくてはなりません。吹田市の負担は平成32年から4年間さらに増加、30億円レベルで続き、平成35年から若干減少して各年23億円程度となり、平成59年まで25年間続きます。病院建設から30年間このように苦しんでやっと建替えによる借金を完済するのですが、その時には病院をさらに建替えなくてはならない時期にきています。吹田市の負担を直視すると、先ほど述べた、新病院は平成36年には単年度黒字になり、平成56年には累積赤字も消えますという数字と全く違う事態であることがわかります。市民病院の建て替えで、ここ数年間苦しんで行った事業見直しの効果がすべてとんでしまうのです。

建替えてしばらくすると、吹田市のこの年間30億円近い負担が市の財政に与える影響が表面化し、市民病院を民間に売却しろという声が大きくなることが予想されます。市長は市民病院を民間に売ることは絶対にないと言われていますが、このような事態になるときの市長はあなたではない。その時の市長が刀折れ矢つきて病院を民間に売ることが絶対にないとどうして言いきれるのですかお答えください。

公立病院を民営化して利益が出る場合があります。しかしそれは何か理由があるから利益がでるのです。丁寧すぎる診療をしたり、あるいは医療装置に必要なお金をかけなかったりです。今まで吹田市民病院が目指してきた、市民に平等に適正な水準の医療サービスを行うという理念が崩れてしまうのです。

人間は平等だといわれるが実際の社会は平等ではない。食べるものも、着るものも違う。しかし、一旦病気になれば、一人の人間として、ほかの人と同じ適正な医療や介護を受けられる。この前提があるからこそ、コミュニティーが成り立ち、安定した日本社会がなりたっていると思うのです。医療の平等性、これは近代外科学の始祖といわれるアンドレアズ・パレから脈々と受け継がれてきているものです。パレは、病床にあったシャルル9世から、私にはあなたの病院にいる患者よりももっとよい手当をして欲しいと言われて、それは出きませんと答えました。なぜなら私は私の病院に来るすべての患者に、シャルル様に行うのと同じ手当をしているからです、と言ったと言われています。このような気持ちを吹田市は持ち続けなくてはならないと思います。市長、市民病院の建て替えをあと10年、20年後にして基金を積んでから建替えを行い、公立病院を持ちこたえるお気持ちはありませんか?お伺いします。

●新佐竹台住宅建替事業に吹田市はどんな思いを込めたのか
時間がありませんので、あと二点については簡単にお伺いします。

吹田市営新佐竹台住宅集約建て替え事業について現在入札募集中で、業務要求水準書が出されています。この集約事業を行うかどうかについては、そもそも市営住宅というサービスが本当に必要か、とか、あるいは南千里駅前の一等地に市営住宅を建てるべきか、ということで議論があった中、吹田市の住宅施策、福祉施策の蓄積を踏まえ、新しい地域コミュニティーの創造で、助け合いが生まれるような、ストーリー性のある住宅建て替えを行ってもらいたいということで、議会もOKしたことを記憶しておりまして、その際市は、吹田市の思いは業務要求水準書のなかに織り込むんだと、言われていました。入札も単なる金額の比較ではなく、どのような市営住宅をつくるのかというコンセプトの提案の中から良いものを選ぶと仰っていましたが、現在の入札募集は、市が言われていた内容に沿ったものになっているのでしょうか、ご説明ください。

私は、市は一般の市民に対し、コミュニティーを作れとか、相互扶助をしろと強制することはできませんが、市営住宅というサービスを受ける方々に対し、できるだけ市営住宅内でのコミュニティー活動に参加下さいとお願いする権限はあると思います。さらに、市営住宅という福祉サービスを受ける住民の方々には一般の住宅に住む方々よりも幸せになる義務があると私は思うのです。私は福祉施策を前進させる市営住宅建て替えでなくてはならないと思いますが、吹田市はどんな思いをこの市営住宅建て替えに込めようとしているのかご説明ください。

●古江台幼稚園、北千里保育園の一体化をどうまちづくりに有益なものにするか
現在一体化を進めようとされている古江台幼稚園、北千里保育園についてですが、私も市の開催された説明会や、よりよい幼保一体化を考える会に出席し、さまざまにご心配されている保護者のお声を聞いて参りました。多くのご意見は、認定こども園への移行や統合そのものに反対するものではなく、この機会に本当に子供たちの保育に適した良い施設になるよう、十分にさまざまな可能性を検討して行ってもらいたいというものでした。私もその場で、保育園は街の花であり、ジブリの宮崎駿さんなどは、保育所は街の中心になくてはならないということを仰っている、街に住む人たちや自治会とさまざまな連携をとれるような形でこの問題は解決しなくてはならないと申し上げました。私は、この問題は、ぜひ北千里のまちづくり全体の中でどうあるべきかを考えていただきたいと思います。私は北千里小学校跡地を含めたまちづくりコンペを行うべきだと考えるのですが、市は民間の専門家の知恵を借りられるおつもりはありませんでしょうか?市のお考えを伺います。

具体的な問題でいうと、保護者は、どうして市は、面積の広い北千里保育園でなく、狭い古江台幼稚園で建て替えをするのか、ということを言われています。それに対する私の一つの提案が、皆様にお示しした東京都立川市にある“ふじようちえん”の写真です。この幼稚園は手塚貴晴さんという設計士が設計されたもので、子供たちがドーナツ型の園舎の屋上で力いっぱい走り回れるようになっています。建物そのものが、子供たちの自由闊達な成長を期待する教育の理念を体現しています。私は例えばこのような園舎を提案することによって、面積の問題をクリアし、保護者のみなさんの同意を得ていくことが出来ると思うのです。

ただし、私は単なる一例としてこの写真をお見せしただけで、いまのところどちらの場所が新認定こども園にふさわしいかを申し上げるつもりはありません。活発な議論と専門家の提案の中で、街の宝としてのこども園が生まれることを期待しております。

二回目の質問を行わせていただきます。

都市整備部から、吹操跡地開発についてのご答弁がありましたが、答弁は、私が指摘した全ての点において、まだ、不確定、不確実であることを示したものでした。すなわち、摂津市が用途地域を変更するのか、吹操跡地が特区指定を受けられるのか、国循が企業や研究所を誘致してくれるのか、あるいは国や府が人材を派遣してくれて企業誘致を助けてくれるのか、すべてが不確定であります。さらにはアラアラなものしかないからお出しできないということで、このプロジェクト全体にどれだけお金がかかって、どれだけの収入を吹田市に生みだすのかについても数字を出していただけませんでした。すなわち、操車場跡地の将来については、まだバラ色になるのかどうか、何も分かっていないのです。

そして吹田市民病院については、立て替えた場合、新病院が現在の財政状況のもと公立病院として維持できるのか不安だと申し上げました。一方これに加え、現在の市民病院については、新病院が建設された後、取り壊さずに別の民間病院が使用するといううわさも聞こえて参りました。そもそも、老朽化して耐震性能がなくて使えないから新病院の建て替えをするという話だったのに、他の民間病院が使えるような建物なら、耐震補強をして吹田市が市民病院として使い続ければいいんじゃありませんか。

市長が進めようとしている吹操跡地の開発プロジェクトで、千里ニュータウンから国循がなくなり、市民病院が吹田市のものでなくなり、使用されるあてのない事業用地と天文学的な負債だけが吹田市に残る、これが考えられる最悪のパターンです。
市長は施政方針で述べられたバラ色の夢しか見ていないんですか?この最悪のパターンに吹田市を引きずり込もうとしていませんか?国循には現地建替えをお願いし、市民病院は耐震補強をして使い、吹操跡地は住宅地として開発する。この方がより吹田市民にとっては安心だと思われませんか。市長はこれまで、この選択肢について検討されましたか?
お伺いいたします。

(質問当日かなりアドリブをいれたので、この原稿は当日の質問とかなり異なっています。後日吹田市のホームページに掲載される議事録の内容が正確なものです。)

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