地球温暖化を巡る政治   

1827年 フランスの物理学者 フーリエが大気の温室効果を理論的に予測
1865年 アイルランドの物理学者チンダルが、温室効果を実験により証明
1896年 スウェーデンの物理化学者 アレニウスが、氷河の研究から大気中の二酸化炭素の量が地表の温度に影響を与えるとの考えを示す。
1958年 アメリカの科学者キーリングがハワイのマウナロア山頂で二酸化炭素濃度の観測開始

国際的取り組みの開始
1985年 オーストリアのフィラハやイタリアのぺラジオで「気候変動に関する科学的知見整理のための国際会議」
1988年 カナダ トロントで「変化する地球大気に関する国際会議」開催 IPCC発足
 アメリカ上院公聴会 NASAハンセン教授が温暖化について証言
1989年 国連総会は、1992年に「環境と開発に関する国際会議(地球サミット)」の開催を決め、気候変動問題、生物多様性保全問題、森林問題について条約を策定すべく交渉を開始
「断固たる、緊急の、全地球的な行動が不可欠である」と国連決議
1992年 リマで地球サミット開催
森林問題についての条約は断念。気候変動枠組条約と生物多様性条約は合意
1994年 気候変動枠組条約発効
1997年 COP3 京都議定書採択
2001年 アメリカ京都議定書交渉から離脱
2005年 京都議定書発効
2008年 G8(洞爺湖サミット) 世界の2050年の総排出量半減目標に合意
2009年 G8 (ラクイアサミット) 先進国が2050年までに先進国全体のCO2排出量を80%削減することに合意
2009年 COP15(コペンハーゲン)120か国の首脳が集まるも合意に失敗
2010年 COP16 カンクン合意 2020年までの削減目標・行動を条約事務局に登録・実施
 平均気温の上昇を工業化以前から2℃未満にすること(2℃目標)に合意
2011年 COP17 ダーバン・プラットフォームを設立 2020年以降のすべての国が参加する新たな枠組みに2015年のCOP21で合意するとの道筋が決定
2015年 COP21 パリ協定合意

気候変動枠組条約と京都議定書
 条約と議定書は法的には同格。内容的には気候変動枠組条約が親条約で、京都議定書が子条約。枠組条約を批准した国を締約国といい、2015年3月現在、195か国と1地域(EU)が締約国。枠組条約の会議を締約国会議(COP)といい、COPの主体は締約国で、自由に発言でき、議決権を行使することができる。締約国は利害や立場が一致する国が集まって交渉グループをつくり、グループとして発言する場合が多い。締約国以外はすべてオブザーバー。オブザーバーにはIPCCのような国際機関、産業界、市民団体などがあり、CASAなど環境NGOもその一つ。

気候変動枠組条約(UNFCCC)とは
・地球温暖化防止の原則や大枠を決めるもの。気候に危険な影響を及ぼさない程度に温室効果ガス濃度を安定させることが究極の目的とする。
・締約国は、おおまかにいうと附属書I締約国(OECD諸国+経済移行国(旧ソ連、東欧諸国)と非付属書I締約国(発展途上国)に分かれる。
・世界中の国が地球温暖化問題に取り組むことに合意したことは大きな成果
・2,000年までの削減約束しか決めておらず、それも1990年レベルでの安定化目標
・目標に法的拘束力がなく、実行へのインセンティブが弱い。結果的に日本をはじめ、ほとんどの附属書I国が2000年までに1990年レベルの安定化はできなかった。

京都議定書とは
・附属書I国(先進国)の排出削減抑制義務に合意
・目標達成のために森林などの吸収源の利用や、柔軟性措置(京都メカニズム)として、共同実施、クリーン開発メカニズム、排出量取引の利用が可能とされる。
・1990年を基準年とし、2008年~2012年を目標年(第1約束期間)とする
・政策協調による排出規制への大きな転換であったが、温暖化抑制に必要な削減量からはほど遠く、途上国に排出抑制・削減努力義務がなく、アメリカが議定書交渉から離脱してしまった。
・京都議定書の第2約束期間についてはCOP17(ダーバン)で話し合われたが、会議直後にカナダが議定書から離脱し、日本、ロシア、ニュージーランドが第2約束期間の削減目標を拒否した。

交渉グループ
各国の形成するグループは、化石資源重視か、環境重視かで、下記のように並べられる
環境重視 AOSIS 小島しょ国連合
     EU
     LDC  後発開発途上国
     熱帯雨林諸国連合
     G77+中国(途上国グループ)
     BASIS  (中国、南ア、印度、ブラジル)
     ALBA  (ボリビア・ベネズエラ・ニカラグア・キューバ等8か国)
        アンブレラ (日本・米・カナダ・オーストラリア・ノルウェー・ニュージーランド)
化石燃料重視 OPEC  (石油輸出国機構)

温暖化交渉におけるNGO
・1989年に世界の地球温暖化問題に取り組む環境NGOのネットワークとして気候行動ネットワーク(CANが結成された。締約国や政府代表団に働きかけ(ロビー活動)を行う組織。世界の100を超える国々から900を超える環境NGOが参加。
・2014年には、日本でも11の団体が参加して「CAN-Japan」という支部のようなまとまりができた。
・「今日の化石賞」を贈ったり、情報の収集、ニュースレターの発行、ロビー活動などを行う。

さて、このように、ここまで地球温暖化に関する政治の歴史を詳しく書いてきたのは、地球温暖化に関する世界の政治が、すべての国々を巻き込み、段階を追って、丁寧に精緻に行われてきたことを理解していただきたいからです。ですから、今回のCOP21でのパリ協定についても、その内容が将来的に覆されたり、各国がむやみに合意の趣旨に反する行為をしたりすることは考えにくいのです。それに加え、後に述べるようにCOP21において、歴史的な合意が実現したのは、この政府間の協議に加え、社会の他の側面で、大きな動きがあったからに他なりません。これがCOP21の合意をより強固なものにしています。COP21の合意内容についてお話しする前に、この動きについてご説明いたします。

 

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