衆議院選挙の焦点

● 日本人の主体性を回復しよう

日本人は、さまざまな分野で、世界的な活躍を見せるようになりました。WBCやフィギュアスケートのようなスポーツの分野ばかりでなく、映画やアニメ、音楽などの芸術、物理学、医学を含む科学など、幅広い分野で、日本人は世界に貢献できるようになりました。

しかしながら、日本人の心の深層には、今、逆に大きなブラストレーションと自信喪失が積み重なっています。それは、日本人が、政治の分野で、世界的な意思決定に、自らの意思を反映させることができない、あるいは、日本という国自身が自由な意思決定ができていない、と感じているからです。

日本人の精神に,最も大きな悪影響を与えたのが、先の郵政民営化を焦点として闘われた衆議院選挙です。幅広い分野について十分な政治的な議論をし、将来の日本の姿について各党がビジョンを示したうえで行わなくてはならない国政選挙を、与党が一つの政策の実現のためだけに、マスコミを徹底的に利用して行いました。郵政民営化の是非は別として、国民の意思決定の重要な機会である衆議院選挙が乗っ取られたという経験は、国民の精神とプライドに大きな傷を残しました。選挙は、少数の政治家や与党のためにあるものではありません。国民が日本の将来像を理解し、選択し、共有するためにこそあるものです。

だからこそ、この四年間与党が行ってきた、さまざまな政策の是非とは別に、国民は、あの郵政選挙を行ったということについて、現在の与党が、正当に罰せられることを望んでいます。だから、どうしても、今年行われる衆議院選挙においては、政権交代が必要なのです。ここで、国民が、自らの意思により政権を交代させることができるという事実を確認することによって、初めて日本人の、政治分野における、自信喪失と無力感を取り除くことができるのです。

●目を開き、問題を直視しよう

日本人は、早く政治における主体性を回復し、直面する問題に取り組んでいかなくてはなりません。なぜなら、世界には多くの危機的な状況が生じており、EUもアメリカも、日本よりも先に大転換を始めたからです。オバマ大統領は、大統領選挙の勝利演説において、「われわれは選挙に勝利したが、(地球温暖化問題で)危機に陥った地球と、世界的な経済危機という二つの難問に直面している」と述べました。そしてグリーンニューディール、環境革命によってこの問題を解決しようとしています。日本も、早く全国民が一丸となって地球温暖化に取り組むという体制をつくらなくてはなりません。地球温暖化問題は難問ではありますが、人間が起こした問題です。人間社会が変わることができれば、問題の解決は可能です。そして、地球温暖化問題に対応した産業システムを構築することで、あらたな経済成長と雇用を生むことが出来るのです。地球温暖化対策において、日本人は、その環境技術により、世界に大きく貢献することになるでしょう。

●自分たちが、受け継いだ愛と文化を、次世代に伝えよう

私たち日本人は、理想を海外にばかりもとめ、自らが祖先から受け継いだ、さまざまな美質や資産を評価することに、あまりにも消極的すぎたと思います。自分の持っていないものにばかり関心をもち、自分のあるがままのものをおろそかにし過ぎたのではないでしょうか。ヨーロッパの各都市は、近代化以前の文化資産を大切に守ることによって、経済のグローバリゼーションの中で自らのアイデンティティーを守ろうとしています。私たち、日本人は、雨が豊かに降り、森が豊かにあるなど、恵まれた国土に暮らしていますが、その国土を耕し、水田を作り、多くの人間を養うとともに、多様な生物が暮らしやすい生態系を作り上げてきたのは、この地に住んだ日本人です。日本人は、その人の手によって生み出した生態系の中で、独自の繊細さや感受性を発揮して、さまざまな文化や芸術を生みだしました。このような文化、芸術を守っていくことは、私たちの先輩に対する、そして子孫に対する日本の政治の義務であると思いますし、またそれが、世界の多様性を維持するという意味で、世界の人々に対する責務であると思います。

●自分達の一番大切なもの、“次世代”を生みだすことのできる政治を作り出そう

私たちにとって、本当に大切なものは何でしょうか?私たちにとって本当に大切なものを一つだけ挙げるとすると、それは家族、すなわち人間ということになるでしょう。しかしながら、日本の社会は、GDPというよく分からない数字を重視するあまりに、自分たちにとってもっとも重要なもの、人間、そしてその人間の幸福を軽視しすぎたと思います。いまの日本社会では、社会が若者に経済的に手厚い配分をしていないため、若い世代が子供を産み育てることができず、出生率は大幅に低下しています。このままでは、将来、介護が必要となる高齢者も、それを支えなくてはならない次の世代も、筆舌に尽くし難い、苦しみを味わうことになります。

地球温暖化を生みだしたのは、我々の生活様式であって、人間の存在そのものではありません。私たちは、生活様式を変えて環境を守るとともに、人間の幸福のために、次世代を生みだし、次世代を教育しなくてはなりません。そこに手厚い資金を配分できる政治を行うべきだと思います。

● Yes, we can!

今回の衆議院選挙で、本当に変わらなくてはならないのは日本の市民の一人一人です。地球の大問題に気づき、その問題を解決することができるという自らの力に気づいて下さい。まず、日本の国民一人一人が、自信と主体性を取り戻して下さい。そんな国民の皆さんが新たに議員を選択するからこそ、政治の場に、日本の未来を切り開いていくための力が吹き込まれ、日本の政治は新たに生まれ変わるのです。
Yes, we can!  日本は必ず再生します。

 

大阪府の課題

このような時代背景の中、大阪府は、どのような仕事を担って行くべきなのでしょうか?

まず、製造業という面では、大阪は、世界で最も製造業の発達した都市の一つであり、今後は、省エネ家電製品、太陽光発電装置の生産拠点として、すなわち地球温暖化対策の最前線の基地として、世界に対して大きな責任を担うことになります。この責任をはたすため、大阪府は用地をはじめ、用水やさまざまな製造インフラ、物流インフラ、さらには人材や、労働者の住宅までをチェックし、足りない部分を補ってゆかなくてはなりません。より省エネの進んだ優れた家電商品の開発、あるいは今後増えてゆく熱帯性の疾患に対応する医薬品などの開発にむけて、大学、研究所を整備しなくてはなりません。そのような機関では、アジアを中心とする世界中からの留学生を受け入れ、教育しなくてはなりません。

次に、日本という国全体のなかでの大阪の役割を見たとき、大阪には東京のバックアップ機能を果たさなくてはならないという使命があります。かならずやってくる関東大震災級の首都圏の震災に備えて、大阪は東京をサポートする副首都としての機能を持っておかなくてはなりません。非常事態には、大型の空きビルや、コンベンションセンターまで借り集めて、事務スペースとしなくてはならないでしょう。その意味で、府や大阪にある国の出先機関は、余裕を持ったオフィススペースを常に確保しておく必要があります。WTCへの移転の関係で話題となった現大阪府庁舎の建て替え問題については、オフィススペースの効率改善という観点に加えて、バックアップ機能の点からも再度議論されるべきです。大阪のマスコミの発信力を強化することも、バックアップ機能という観点から重要な課題だと思います。

吹田市で議論されている吹田操作場跡地再生計画ですが、環境・医療拠点という現在のプランに加えて、鉄道による輸送力を生かし、災害時に全国に災害復旧に必要な機器や物資を配送するための拠点としての機能を持たせることを検討すべきではないでしょうか。

次に、近畿圏における大阪府の役割についてです。道州制が導入されることになれば、近畿圏の政治、行政の中心は現在の大阪府に置かれることになり、大阪の役割はますます大きくなると思われます。しかしながら、現在の道州制の議論の中では、いまだ、国、道州、市町村の役割分担についてコンセンサスがありません。現在の状況では、道州制の議論の出発点として、行政区画を近畿圏全域として捉えた場合に見えてくる行政課題を考え、現在の大阪府が先取して対応すべき点について議論をしていくことが大切だと思います。

近畿圏が、日本の他の地域と特に異なる点は、近畿圏が日本という国の発生の地であり、文化という観点で特に魅力のある地域であることです。京都や奈良という都市全体が、貴重なアジアの文化財であるだけでなく、大阪も、飛鳥時代、奈良時代と二度、難波宮に日本の都がおかれた、歴史豊かな街なのです。さらに近畿には、古い文化だけではなく、神戸という欧米化され、シンガポールなどとともに、外国人の住みやすい街として上位にランクされる都市もあります。一方大阪の文化状況は、古い日本文化もあり、USJをはじめとするアメリカ文化もあり、昭和の匂いの濃厚な商店街もあるという、文化のごった煮状況です。大阪の文化は、特定の文化を守るというよりも、産業のまちとして、住民が多くの文化を楽しむことを目的に発達してきたのでしょう。こんななかで、大阪がその魅力を高めていくためには、この文化のごった煮の度合いをさらに高めていくという方法があるのではないでしょうか。南港の地域などで、よりアジア、太平洋色を強め、インドネシア、フィリピンや他のアジア諸国の文化や意匠をより大胆に取り入れた街づくりをしてみることは出来ないでしょうか。これらの諸国の文化の力により、大阪の魅力を高めるという方法があると思います。大阪は、EXPO‘70で、世界に多文化の魅力を発信しましたし、また民族学博物館は、世界的に有名な多文化研究の中心地になっています。大阪をさまざまな国の文化が息づく街、日本のNYとすることにより、NYのような活気を生み出すことを目指してみてはいかがでしょうか。

最後に、もっとも重要な、住民の視点からの課題を述べたいと思います。大阪は、大阪市が、産業・ビジネスの中心地としての機能を果たしてきたため、中心部に、良好な住宅地や、住民のための大学施設が発展してきませんでした。中の島を中心に、近年文化施設が建設され、文化色を打ち出そうとしていますが、街全体に生活の楽しさという要素が欠けているため、文化施設と、地域の一体性が生み出されていません。住民自治と住民文化をどのように都市のなかで回復していくか、商業施設、ビジネスビルのなかで、住宅地にどうやって住みやすさを回復させるのか大阪市内についてはここに大きな課題があります。

大阪において、住宅地が発達し、地域に根を張った住民発の文化が息づいているのは、衛星都市です。住民発の文化に光をあてて、大阪の元気を取り戻そうという活動が、橋爪紳也府大特別教授などが進める、大阪ミュージアム構想です。大切なのは、掘り出された文化や景勝地をさらに組み合わせ、発展させて、集客が可能なレベルの、ストーリー性のある観光資源に育て上げることだと思います。

ところで、北大阪の大切な観光資源である箕面の滝はトンネル工事で大変なダメージを受けています。何とかして水量を回復し、周辺の工事で切り開かれた山肌を修復、修景しなくてはなりません。また、北大阪の大切なリクリエーションの場である万博公園は、エキスポランドの廃園など大変な問題を抱えています。大阪梅田のイメージアップのためには、わざわざ観覧車を作りました。エキスポランドの観覧車が撤去されたた時、北大阪のイメージに与える影響にはすざまじいものがあります。なんとか遊園地を一部でも再開することはできないでしょうか?市町村合併により、北大阪市ができれば、遊園地ぐらいもてるのでしょうか?

住宅地に最も重要な要素は、生活する楽しさです。万博記念公園周辺を大切にしてこなかったから、北大阪のイメージが落ち、彩都や、箕面森町の住宅地開発が上手くいかなかったのではないかと感じるほどです。上野先生に本当にご尽力いただいた、児童文学館についても、建物がとりこわされるまで、まだ保存活動を続けるべきです。あの文学館は、丹波篠山のチルドレンズミュージアムのような子供を楽しませる要素を付け加えることによって、本当に地域の子供たちに愛される施設に生まれ変わります。そのままの形で残すのは難しかった文学館ですが、新しい要素を付加することによって再生可能だと確信しています。

これから急速に進む高齢化の中で、府営住宅などのバリアフリー化を大急ぎで行わなくてはなりません。間取りなども住みやすいように改造しなくてはなりません。府立学校ともども対震補強も行わなくてはなりません。上野先生は、昔から、これらの問題についても活動をされていらっしゃいますが、景気対策にも繋がるため、具体的にどの府営住宅にどのように手をいれるかまで、提案できるようになりたいと思います。

それから、地球温暖化対策ということで、各住宅の省エネ度をチェックし、改善をアドバイスするアドバイザー制度への補助や、公共交通のさらなる整備など、考えられることがまだまだあると思います。

 

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