吹田市の未来に希望は持てるのか?

昨年、財団法人関西社会経済研究所から出された自治体の財政健全性についての報告が市議会で取り上げられ話題を呼びました。吹田市の財政、特にキャッシュフローが、他の都市との比較においてかなり悪いとされたのです。この報告では、基礎的財政収支という指標を用いて自治体を6段階でランク付けしているのですが、近隣の自治体では、豊中、高槻が上から3番目のランク4、茨木、箕面がランク3で、摂津市が最低のランク1になっています。吹田市は、摂津市の僅か一つ上のランク2に低迷しました。

現在の経済状況の下では、吹田市の財政も厳しい状況にあることは事実です。しかしそれでも日本の各都市はこれから都市インフラをつくらなくてはならない中国や、公共交通機関の発達していないアメリカの諸都市よりも有利な立場にあり、また、吹田市は日本の他の都市と比べた場合、多くの強みがあります。吹田市の希望について3つの観点から概観しましょう。

*日本をリードする教育都市

 吹田市には、多くの高等教育・研究機関があります。また、民族学博物館・吹田市立博物館などでは、市民の高度な生涯学習活動が可能です。問題は、現在吹田市の多くの小中学校の建物が老朽化し、同じ時期に更新の必要性が出てくることです。しかし、この問題も、この機会に市民も参加して、安全で子供たちのやる気を生み出し、地域の誇りになる、デザインと使い心地の良い小中学校を作るチャンスだと見ることもできます。問題は、いかに無駄な投資を省いて、投資を教育分野に集中するかです。

また、万博記念公園などを中心に、高いレベルの環境体験学習を市民の力で生み出していくことはできないのでしょうか?万博公園の蛍を見るために観光客がくる、というレベルの活動はできないのでしょうか?万博公園の森で、たくさんのカブトムシやクワガタ虫が生まれ、夏の早朝、毎日百組以上の家族が抽選で虫取りを楽しむ、なんてこともあったらよいかもしれません。遊休農地で農業体験を可能にするような試みが、摂津市ではNPOにより進められているそうです。吹田市でも可能かもしれません。

*理想的なコンパクトシティー・スマートシティー

 都市が持続的に発展するためには、幾つかの都市機能が重層的に存在するのがよい、という考えがあります。すなわち、徒歩10分圏内に、商店街があり、スーパーがあり、住宅があり、そしてオフィスも公園も農地もあるというコンパクトな街が、老若男女を集める住みやすい街だというのです。

 そのような目で見ると、吹田市にある商業地区は職住接近のコンパクトシティーであり吹田市はその複合体と見ることができます。吹田市は、日本経済新聞がいみじくもサスティナブルシティーとして近畿圏No.1に選んだように、持続可能性のある姿をしているのです。 そして、吹田市に公共交通機関が発達していることは、低炭素都市として発展するために有利です。これで、東西方向の利便性をバス路線などの強化などで図り、電気自動車などのためのインフラを整えれば、すべての年齢層の人たちにとって、より住みやすいスマートシティーになるでしょう。

*理想的なシルバーシティー(福祉都市)

 千里ニュータウンには高齢者が集中して居住されているのですから、幸せな高齢者の街(シルバーシティー)についてのさまざまな試みを行う地域として吹田市は理想的なのです。そして、このレポートの無縁社会のところでも少し述べたような形で、今ある苦痛を一つ一つ取り除くという作業を積み重ねると、日本中のお手本になる幸せな高齢者の街が生まれてくるという希望があります。