無縁社会などあってはならない!

皆様は、NHKスペシャル“無縁死、3万2千人の衝撃”を見られたでしょうか?毎年、自殺者にも匹敵する数の人が、死んだ後も引き取られることのない遺体として亡くなっているという特集です。どれだけのさみしさと、肉体的な辛さがそこにあったのでしょう。動かない体をうらみ、止めることのできない痛みに、もがきながら死んでいく悔しさ。そして、それよりも、その死にいたるまでの果てしなく長い孤独な生活。そのような状況を生み出したのは、決して自分ひとりの責任でないのに、自分を責めてしまう人たち。

私は、取り返すことが不可能だと知りつつも、小さな子供からお年寄りまで一緒に暮らした大家族の時代が人間にとってより自然な生き方だったと思います。
今行政が、そして私たち一人一人が、「タイガーマスク現象」であらわれた、日本人の心根にある助け合い、支えあいの心情あふれる社会をつくっていかなくてはなりません。より多くの、自治会活動や、「独居老人見廻り隊」などのNGO活動が必要でしょう。町や建物、公営住宅のありかた、デザインを変えていかなくてはなりません。辛い方にも、声をあげて、助けを求めていただきたいと思います。

一つの見方を述べさせてください。私は、実現したいもの、守りたいものを最後まで失わず社会に関わっていくことが、その方自身の孤独を癒すと思います。社会や自治体も、共同体の構成員に、さまざまな事態で協力を求めていくことが、孤独な個人を減らすために、とても大切なことだと思います。社会の側からも、そして個人の側からもお互いに手を伸ばして、人間が本当に求めているもの、心が繋がった社会を取り戻していきたいものです。

もう一つの見方です。本来人間は、仕事だけでなく、様々な文学や音楽、舞台芸術、映画、インターネットなどを通じ、あるいは友人、家族関係を通じ繋がっているものです。だから、私は孤独感を感じたら本を読みます。いろいろな時代に生きた人々、その小説家と僕は同じ時間を過ごすことができるからです。何か表現活動をしている人は、その活動で人と繋がりたいと思っているのです。だから、人間の精神はいつでも決して孤独ではないのです。

しかし、孤独が問題になるときに常に問題にされているのは仕事がないから孤独という解釈です。これは社会に全く余裕がなくなり、お金の流れが多くの人に対して切れてしまっているので、仕事以外のことを考えることもできないからでしょう。人が生きていくためのお金の流れを絶やしてはならない。これは絶対の要請です。