地球温暖化対策で世界は完全に先を行き、日本は立ち遅れている

いまだにYouTubeなどで、地球温暖化は存在しない、起こっているのは気候変動であり、地球温暖化ではない、ロシアのウクライナ侵攻で、ドイツが先導してきたEUの再エネ政策の弱点が露呈した、などなどの情報が流されています。そうなのかな?日本は再エネへの転換政策を緩めてもいいのだろうか?日本の自動車産業にも大きな痛みがあるだろうし--、と考えられる方もいらっしゃると思いますが、それらの情報の方向性は全く間違っています。日本の中には故意に誤った情報を出す方もいらっしゃいますし、その情報に乗って、科学的な理解のない方も声を上げ、現在の日本の地球温暖化の情報状況になっているのです。これから私が調べた限りの情報をお伝えします。これらの情報の多くは日本の市民にまで届いていないのです。

まず、EUは、2019年12月に2050年までにEU域内からのCO2排出量を正味ゼロにするための「欧州グリーン・ディール」計画を発表しました。この計画によると、2020年3月に初めて「欧州気候保護法」をEU法として制定し、各国に対してCO2削減を義務づけました。2050年の正味ゼロを達成するための中間目標として、EUは2030年のCO2排出量を1990年比で50~55%減らすことを目指します。この計画の発表の際に出された、ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は以下の声明を発しています。

「欧州グリーン・ディールは、我々が健康な生活を守り、企業のイノベーション力を高めるために、どのように生活や経済を変えればよいかを示す行程表だ。したがって、この計画はコストがかかるだけでなく、経済成長にもつながる。EUはCO2削減の筋道を全世界に先駆けて示し、迅速に行動することによって、EUの経済界を気候保護テクノロジーのパイオニアにする。我々はこの計画によって、地球、生物学的多様性、欧州の自然、海、森林を守ることに成功すると確信している。我々は持続可能性と競争力を高め、ベンチマーク(模範)となることによって、他の国々も我々と同じ道を歩むように説得することができる」

EUはこのような強い決意のもとエネルギーの再エネへの転換をすすめているのですから、今回のウクライナ侵攻でドイツが一部の石炭火力発電所を再稼働したというニュースが入ったとしても、それは短期的、一時的な処置であることを我々は確信できるのです。

ついで、アメリカの現状については以下のような状況です。(元外交官の前田雄大氏の情報を参考にしています。)2021年1月20日バイデン政権が発足しました。バイデン政権の最重要政策は気候変動対策です。バイデン政権が誕生したときにイギリスのジョンソン首相やEUから送られた祝辞のトップには「ともに気候変動に取り組みましょう」という言葉がありました。

バイデンの政策メニューにおいては、グリーンエネルギー部門の雇用促進とそれによる経済成長が明記されており、財政出動に関してもクリーンで強靭なインフラ及び社会開発のためのエネルギー・気候投資を歴史的な額で動員しようとしています。国内の主要セクターについては、まず輸送部門でEVの導入促進のための税額控除、50万基の充電スタンドの設置が書かれています。次いで、エネルギー部門については、再エネ、CCUS、原子力という3つがあげられており、石油に関しては、以前から脱炭素政策に関して象徴的な政治課題だった、カナダから米中西部まで原油を運ぶパイプラインの建設許可を取り消しています。

中国が国連主催のClimate Action Summitにおいて、実現可能でかつ世界標準に照らせば野心的な目標を立てました。この脱炭素の論点にいたっては米中が同じ方向を向いています。熾烈なグリーン競争を行いながら、一方で進む方向はともに脱炭素ということになり、米中がともに、世界の脱炭素化をリードしようとしているのです。

三つ目に、深く受け取らなくてはならないのが、2021年にIEA(International Energy Agency)が出している脱炭素指針です。IEAは、これまで化石資源産業の方針に大きな影響を与えてきた国際機関で、化石資源産業の側に立ち保守的な見解を出す傾向にありました。ところが、このIEAが再生可能エネルギーへの転換を打ち出し、2030年、2050年に向けたロードマップを示したのです。このレポートの冒頭に、このようなことが書かれています。

「世界が2050年温室効果ガス排出ネットゼロとするには、ものすごい困難が待ち受けている。現実的な目線からは、その可能性というのは非常に狭い道筋をたどらなくてはならないからだ。今まさに各国政府が行動に移すべきだ。グリーンエネルギーへの移行を加速させるために、思い切った判断をすべきだ。このレポートはIEAの歴史上最も重要かつ困難な業務の一つであった。」

そして、詳しくはYouTubeの「エナシフTV」の「国際エネルギー機関の脱炭素指針が半端ない」を視聴していただきたいのですが、簡単にまとめると次のようになります。

2050年までのガイドマップ
・最も大きいイノベーションの機会は先進的蓄電池、水素電気分解、CCSにある。
・化石燃料に変わり大部分は再エネになり、引き続き使われるのはプラスティックとCCS付きの施設になる。
・2021年以降、新しい油田、ガス田は開発承認しない
・2030年には乗用車の販売の60%がEVになり、新規の建物はゼロカーボン対応になる
・2040年には対策のない火力発電を全世界から撤廃、電力セクターのネットゼロ達成
・2050年には建物の85%がゼロカーボン、90%以上の重工業が低排出、エネルギーの70%
 が太陽光と風力

日本政府は、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、❝温暖化への対
応を経済成長の制約やコストとする時代は終わり、国際的にも成長の機会ととらえる時代
に突入した❞とし、2020年末に「日本のグリーン成長戦略」を発表しました。一応形の
上では各国と肩を並べたという事ですが、その成長戦略の内容を見ると、問題が多いです。(詳しくは私のYouTube動画「希望の地球温暖化対策 第20回」をご視聴ください)


ここでは、日本の温暖化政策全般についてのコメントをするにとどめます。

私は、日本の企業、そして日本人が非常に可愛そうだと思います。事態を理解できず、世界の標準から日本がどんどん外れていっています。これからはいかに再生可能エネルギーを安定的に安く入手するかが、産業競争力を決めます。安い再エネがなければ、安い水素も作れませんし、ゼロカーボン製鉄もできませんし、ゼロカーボンの鉄がなければ、自動車産業も、電器産業もすべてが出来なくなってしまうのです。火力発電を守って、日本の産業全体を殺すことになってしまうのです。もっとも重要なのは変わる勇気だと思います。日本は世界によって生かされています。日本人だけで生きているのではないのです。是非世界が日本人に何を望んでいるかを、しっかりと考えて下さい。世界は、お互いに助け合い、ともに生きていく世界にかわっています。そうならなければ、人類は地球温暖化を乗り切れないのです。日本がこの変化に適応し、世界にその素晴らしい能力で貢献することで、この世界はより迅速にこの危機を乗り越え、より美しい、素晴らしい場所として残っていくと思います。