日本の社会、政府は地球温暖化対策の必要性を直視できなかった

このレポートは、最近の日本社会で議論されていることを中心に書かせていただいているのですが、地球温暖化に関する議論や記事を中心にできないことには本当にがっかりとしてしまいます。日本の社会、政府は地球温暖化対策の必要性を直視できていないといえるでしょう。大阪・関西万博についても、本来なら地球温暖化問題などの世界的な課題に、世界の国々が共同して取り組む場所だったはずです。大阪維新や日本政府が、ほんの最近までまともに万博と取り組まなかったのは、地球温暖化問題と真剣に取り組みたくなかったからではないでしょうか。

最近、ある勉強会で、ここに添付した資料( )を使って、簡単に日本や世界の地球温暖化問題への取り組みをレクチャーしました。詳細はそちらを読んでいただきたいのですが、ここでも簡単に説明をしておきます。

地球温暖化対策をかく乱する議論(地球温暖化はウソ?等)については、すべて決着がつきました。これからの世界は、電力の再エネ化、省エネと電化の推進、グリーン水素の利用、素材産業における脱炭素製法への転換(水素による製鉄など)で脱炭素社会に向かっていきます。

EVやビル暖房、トラック輸送、航空、船舶、鉄鋼、セメント、化学製品などの各分野で、脱炭素製法の爆発的増加がここ数年で起こります。中国におけるEV車の販売は、2021年において、それまでの念100万台から600万台に大幅に増加しました。そしてこれらの脱炭素化と経済成長が両立することが、各国で実証され始めています。スウェーデンでは、1990~2017年の期間に経済は78%成長する一方、CO2排出は26%削減されました。

アメリカでは2022年8月に「インフレ抑制法」という名の法律で、3690億ドルを気候変動に投資することが決まりました。カーボンプライシングによって排出を抑え込むのではなく、金銭面の支援によって新技術の導入を加速させることが特徴的です。米民主党は、この法律で30年の温室ガス排出量が05年比で約40%削減できると見込んでいます。法律がない場合は25~30%減に止まるといわれており、大幅な前進です。

世界第2位の経済規模をもつEUは、炭素排出を2030年までに1990年の水準と比較して55%削減する一方で、50年までには最初の「気候中立な大陸」になるという目標を掲げています。EUの政策執行機関である欧州委員会は19年、こうした目標を達成するために「欧州グリーンディール」を発表しました。欧州のエネルギー、食料、交通システムの設計を根本的に見直すための提案です

日本では、下記の考え方がまだ生き残っており、社会変革を遅らせています。
① 日本はすでに、世界最高水準の排出削減技術をもっている
② 日本は石油ショック以来、省エネに取り組んでいまや、「乾いた雑巾だ」
③ 日本の限界排出削減費用は世界最高水準/さらなる温暖化対策は成長にマイナス
④ 再エネはコスト高で、変動電源のため、安定供給を担えない
⑤ 発電部門が高CO2排出だから、EVシフトに意味はない
⑥ アンモニアを混焼して石炭火力を延命させるべきだ

これらの意見に対しては、どれも明確な反論ができます。
まず、原料や、製品の製造システムなどをそのままに、CO2排出削減をどうするか論ずるから、①②③のような言葉がてくるのです。鉄鋼を、コークスではなく、水素還元で作る方向性が出てきたことを考えてください。これらの言葉が、どれだけ意味がないかが理解できるでしょう。

④については、再エネはコスト高でもなく、安定供給が担えないものでもありません。
⑤については、発電を再エネ化するのですから、EVには意味があるのです。
⑥については、カーボンプライシングをして、製品価格が、正しい環境負荷を示すようになると、どの発電方法が正しいか、分かるようになります。遅く低いカーボンプライシング(CP)の導入ゆえ、石炭火力などが安い発電のように見え、産業構造は変化せず、産業全体が低付加価値に甘んじています。

重要なことは、サウジアラビアをはじめ、世界で、化石資源産業しか持たない国々が、パリ協定などゼロカーボンに向けた取り組みに賛同してまじめに取り組む中で、日本という比較的豊かな国で、あるいは各企業が業容転換を容易に出来る状況の中で、必死に変わることを拒否する姿は、決して美しいものではなく、さらに残念なことには、それを世界から見られ、日本という国が評価されてしまうということです。