消費税増税は日本経済を掘り崩す

岸田文雄首相が、新たに打ち出した経済政策で「減税」を強調しています。2021年10月の首相就任以来、減税を訴えたことはほとんどなかっただけに、唐突な路線変更をした形になります。だが、国民が長く続く物価高に苦しむなか、即効性のある「所得税減税」や「消費税減税」「ガソリン税減税(トリガー条項発動)」などは見られません。

岸田文雄首相は9月26日の閣議で、経済対策を10月末にまとめるよう指示を出しました。その経済対策は①物価高から生活を守る対策②持続的賃上げ、所得向上と地方の成長③成長力強化に資する国内投資促進④人口減少を乗り越える社会変革の推進⑤国土強靱(きょうじん)化、防災・減災など安全・安心の確保――という5つの柱で構成されています。その中で、特筆すべきは「減税」という項目です。賃上げ税制における減税制度の強化、特許などの所得に対する減税制度の創設、ストックオプション減税の充実、事業承継税制の減税措置の申請期限延長などを強調しています。

岸田首相は、かつて「日本の政治は消費税率引き上げに様々なトラウマがある。成功体験を実感することが大事だ」「消費税を引き上げる、ぜひ、この引上げを円滑に行うことによって、引上げの成功体験を国民の皆さんとともに実感し、未来を考える、こういったことの意味は大変大きい」などと発言しており、筋金入りの増税主義者であることは疑いようがありません。いくつかの増税案について、国民の猛反発を受け撤回したものの、バラマキをやめたわけではなく、ステルス増税(=増税なのに、増税ではないと言い張る)や赤字国債(=結局、将来増税?)で国民の目を欺いているのが現状です。

インボイス制度によって、売上の低い中小企業や個人事業主を狙い撃ちにした負担増が実施され、来年には復興特別所得税(徴収期間が14 ~ 20年延長)、高齢者の介護保険(ある程度の所得のある高齢者の負担増)、国民年金(国民年金保険料の納付期間が5年増え、約100万円の負担増)、森林環境税(1人あたり年間1,000円を住民税とあわせて徴収)、生前贈与(相続税の対象期間が広がるという事実上の増税)、2025年には「結婚子育て資金の一括贈与の特例」が廃止されます。

・解散総選挙後に待っている「大増税」とは
今、永田町は、岸田首相が衆議院議員解散し、12月の総選挙を行うのではないかという情報が駆け巡っています。自民党の森山裕総務会長は、10月1日、北海道北見市で講演。<新たな経済対策で「減税」が検討されていることを踏まえ「税に関することは国民の審判を仰がなければならない」と述べており、衆院解散の大義になり得るとの考えを示した発言とみられる>(日経・10月1日)と報道されていて、岸田首相が増税ではなく、減税を掲げて国政選挙を戦う地ならしをしています。

しかし、冒頭で並べた減税案を振り返ってみてください。どれも非常にテクニカルで、わかりにくい減税ばかりです。金額も、これから予定されている増税の規模とは比べ物にならないぐらいに小さいのです。その一点をもっても、国民はバカだと思われ、騙そうという気を感じます。100円減税するから1000円増税するというのは、減税ではなく、増税です。可処分所得を失っている国民にしてはならないことです。