日本の失われた30年は、国民の可処分所得減少がもたらした

日本が成長しなかった原因を端的に言うと、日本人の可処分所得が減少したからです。つまり、日本人が手に持っていたお金がこの30年減少していたのです。

この資料は、内閣府が「国民経済計算」という統計資料に基づき作成したものです。まず、可処分所得、という言葉について説明しますが、可処分所得とは、給与等の所得から、税金と社会保険料を控除し、社会保障による現金給付額を加えたものをいいます。左側のグラフには名目ベースが折れ線で、インフレ率を調整した実質ベースを実線で示してあります。すると、1980~1990年の年平均成長率は実質でも4%程度の伸びがあったものが、2000年以降の平均成長率は名目、実質ともに0.3%程度に止まっていることが分かります。また1989年の消費税の導入、1997年、2014年の消費税率の引き上げが、可処分所得の減少に影響を与えています。

右のグラフは、家計の金融資産残高の推移を表しており、国民の現金資産はゆるやかではありますが、増加しています。しかしながら、世帯主の年齢階級別に確認をしたのが下のグラフですが、39歳以下の家計で明確な下方向へのトレンドがあり、2000年以降純金融資産がマイナスに転じ、2017年時点では▲521万円程度になっていることがわかります。40~64歳の家計では若干の下落傾向があり、65歳以上の家計は、2017年時点で2,249万円程度のプラスになっています。

このように、若年世帯が貧困化していることは、可処分所得を年代別に見た、次のグラフからも分かります。

このグラフは、総務省の「家計調査」「全国消費実態調査」に基づき、内閣府が作成したもので、世帯主の年代別に、可処分所得がこの30年どのように変化してきたかを示しています。左上のグラフについての内閣府の説明を要約します。39歳以下については、2000年ごろから非正規社員の割合が急上昇したことが、減少の主因とされています。40~64歳については、39歳以下についてと同じ理由に加えて、社会保険料の支払いの増加が影響しているとしています。65歳以上については、非正規社員として働く高齢者の割合が増えたことが水準の低下としてあらわれ、また、社会保障給付の減少と介護保険料の支払いが可処分所得の減少につながっているとしています。

若い世代の経済状況がここまで悪化すると、少子化が進むうえに、消費ができなくなって、経済自体が縮小することが、良くわかります。そして、国民の可処分所得が減ってしまった理由を繰り返すと、この内閣府調査ではっきりと述べられていますが、雇用の質の劣化(正規雇用から非正規雇用)と、社会保険料負担の増加だ、ということになります。