マイナ保険証は、国民にも行政にも大変な手間が

政府は、現在使われている健康保険証を2024年の秋に廃止し、マイナンバーカードへ一体化した形に切り替えると発表しました。 また、運転免許証との一体化の時期についても、当初予定していた2024年度末から前倒しする方針も示しました。ところが、医療機関などでの保険診療のうち、マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」を患者が2023年8月に利用した割合は5%を割り込み、低下は4カ月連続でした。政府が利用促進を呼びかけているにもかかわらず、マイナ保健証が国民の間に浸透していない実態が改めて明らかになりました。立憲民主党など野党は「国民の不安が払拭されていない証左」(党幹部)と、10月召集の臨時国会で政府を追及する姿勢を見せています。政府は今年4月から、マイナ保険証の電子情報を読み取り、どの保険組合に加入しているかなどを確認する「オンライン資格確認システム」を導入。各医療機関に顔認証機能付きカードリーダー(読み取り機)の原則設置を義務付けています。厚生労働省によると、今月24日現在、全国で90%近くの医療機関・薬局がシステムの運用を始めていますが、医療機関窓口の顔認証でエラーとなったり、高齢者を中心に「無資格によるいったん10割負担」や、窓口負担割合の誤表示が起きたりするトラブルが続発しています。

現行の保険証廃止反対を主張する全国保険医団体連合会(保団連)の幹部は、取材に「政府がメリットを強調すればするほど、トラブルへの弥縫策を出せば出すほど、利用件数が減っている。使い勝手が悪いことの証しだ」と指摘。「後期高齢者を中心に『一度作ったマイナ保険証の保険証機能を解除したいがどうしたらよいのか』という問い合わせが増えている。厚労省がトラブル防止を指示しても、利用が急に増えるとは思えない」との見方を示しています。


・立憲民主は「廃止延期法案」提出の方針

立民幹部は9月29日、来月20日にも召集される臨時国会の冒頭に「健康保険証廃止延期法案」(仮称)を提出する意向を示しています。立民の衆院議員で元厚労政務官の山井和則氏は、取材に「マイナンバーカードと保険証のひも付け人数自体は増加しているなかで、その利用数が減少し続けるということはマイナ保険証が信頼されていないということを政府は理解すべきだ。2024年秋の保険証廃止は延期すべきだ」と話しています。