◆ 炭素の海中固定について(2006年4月4日)

先日北海道留萌にある水熱化学という私が東北大学で学んだ技術を使った、廃棄物の処理施設を見学に行った。そこで私が発見したものは、実にこのMACSという技術は、私達が夢見ていた二酸化炭素除去装置ではないかということだった。

念のために言うと、宇宙戦艦ヤマトで地球を救ったあの放射能除去装置に匹敵する大きなインパクトをもつ装置ではないか、ということを言いたいのだ。

装置は、そんなに複雑なものではない。しかし実に効率的に、時間もエネルギーも多くを使わないで、プラスティック製品を含めた有機物をアミノ酸やオリゴ糖を主成分 とするこげ茶色の粉末に変えてゆく。その装置の一回の廃棄物の処理量は4トン程度だが、一回の反応時間が1時間から一時間半だから24時間稼動すると数十トンの廃棄物が処理できる。この装置はまだこんな小型のものがたった一機つくられているだけなのだ。実に嘆かわしいことだ。

大事なのは、焼却炉や、消滅型のゴミ処理装置と違い、この装置は有機物を二酸化炭素ではなく短時間で有用な飼料や肥料に変えることが出来るということだ。

飼料や肥料としての用途の開発は十分に出来ていないようだったが、たとえその用途での性質が芳しいものでなくても、この装置で処理された下水汚泥などはおそらく海の肥料として海洋に投棄することができるはずだ。

人間が化石燃料を掘り出すことによって大気圏に放出してしまった炭素を固定化するのは、今のところ光合成のできる植物しかない。しかし、植物がいったん炭素を固定してもその植物が燃やされたり、腐ったりしてしまうとまた炭素が空気中に放出されてしまう。

我々が大気中の炭素を固定化しようと思うと、この植物の遺体、あるいはそれを人間が食べた後のカスである下水汚泥を海洋を汚染しないかたちに変えて深海底に投棄するしかない。この装置はまさに、その二酸化炭素の海洋固定のための役割の一翼をになうものだ。

残念なのは、ほとんどの人が、この装置を廃棄物処理施設としてみていて、二酸化炭素固定化装置と見ていないことだ。全国の汚泥や廃棄物をこの方法で処理すると、おそらく炭素を日本だけででも年間数千万トンは固定化することができるだろう。炭素の排出に負の価値がある時に、あるいは日本が京都議定書を高い二酸化多酸素の排出権を海外から買って遵守しようというときに、この装置の価値に気づかないのは本当に“もったいない”ことだ。

 

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