議会レポートVol.8

皆様お元気ですか? このレポートが皆様に届く頃には、もうアメリカのイラク攻撃が開始されているかもしれません。私は抑止力を失った大きなパワーがいかに恐ろしいかを痛切に感じるとともに、あの可愛いイラクの子どもたちの命が奪われないよう心から祈っています。そして、世界でほぼ唯一、全面的にアメリカを支持している日本の政府に対し、勇気を持って、アメリカに対し武力以外の手段を尽くすよう説得することを求めて行きたいと思います。

今の吹田市の現状は、アメリカに対してものを申せない日本政府と同じで、強い企業の論理に押し込まれ、住民の健康や、命、歴史を守るという勇気を表明することさえできずにいます。平成15年予算は、まだ焼却場整備費などが本格的に発生していませんが、この時点ですら大規模開発、大きな公共事業に対する予算などを全く削っていないため、単年度で約110億円、一般会計予算の1割を超える赤字を出し、赤字特例債を発行しています。財政的にはすでに末期的な状況です。

さらに、阪口市長は、最近あちこちで聞かれるようになってきた、北摂の7市3町を合併させ政令指定市をつくろうという動きに同調し、吹田市を消滅させようという考えを持っています。前回の私がレポートで報告した万博記念公園を新市の中心として開発しようというあの計画です。

私は吹田市の3月議会において、この四年間の議員生活最後の議会質問を行いました。それに対する阪口市長を始め理事者側の答弁は、これまでよりも明確に吹田市民の利益から離れたものになっていました。このレポートでは、私が行った質問を中心に現在の吹田市政のおかれている危機についてご説明させていただきます。

 

市町村合併と万博記念公園の開発・消滅について

私は前回のレポートで、市長与党の議員から「市長は、将来吹田市と摂津市、茨木市等が合併したとき、万博記念公園周辺が新しい市の中心になるので、新市庁舎や関連の施設を作るのに、この万博記念公園の土地をつかいたいといわれている。だから万博美術館も、エキスポホールも、そして太陽の塔もぶっ潰して、更地をつくるとのだ。山口君、悪い事はいわないから、万博美術館を残せなどという馬鹿なことをいうのは止めなさい。」と忠告されたというお話を書きました。しかし、切迫性という点では、万博文化施設の取り壊しは切迫しているが、市町村合併の話はまだまだ先のことで、一部の開発業者がそんな案を出して動いている段階だろうと思っていました。


ところが、あちらこちらで、この計画が進行していることをを裏づける情報が出てまいりました。阪口市長自身が議会で、「私個人としては将来北摂7市3町の合併がありうると思っている。」という発言をされたのに引き続き、2期目に向けた公約で、万博記念公園駅から、JR岸部駅にむけて大阪モノレールを延伸させる計画を打ち出しました。さらに今度は毎日新聞が、「北摂政令指定都市をつくる会」が発足し、市町村合併特例法で定められた住民発議へ向けた署名運動を始め、2005年3月末迄の合併を目指していると報じました。住民発議制度によれば、有権者の50分の1以上の署名があれば、自治体は合併協議会を設置しなくてはならず、合併が、夢物語ではなくなってきます。

開発業者側としては彩都の開発を含め、大規模開発が難しくなってきた経済状況の下で、市町村合併に関する国の補助まである、交通が至便で、利益の出る確率が高い万博記念公園の開発が、おいしい話であることは間違いないでしょう。だから、大阪府や、政府の方針をうまく利用し、実現性が疑わしくても北摂7市3町の合併の話まで待ち出してこの開発を実現しようとしていると思われます。

また、市の運営が難しくなっている摂津市や、府としての責任を少しでも減らしたい大阪府も一緒になって、あわよくばこの合併を進めてしまおう、少なくとも政府に対し市町村合併に努力したという姿を見せておこう、という意向で、このプランを後押ししていると考えられます。

吹田市の阪口市長は、どう考えているのでしょうか。市長が万博記念公園の開発と7市3町の合併に対して前向きであることは事実ですが、何が市長をこの方向に駆り立てているのでしょうか。一つには市町村合併を利用しようとする開発業者との関係、二つ目には個人的に非常に親しい摂津市の森川市長への配慮、三つ目には、これが大きいのですが、吹田市の財政健全化の先送りができる、と考えている可能性があります。


この四年間市長は、財政健全化に取り組んだとはいっても、一般会計予算において支出はこの四年間でほとんど減らしていません。その一方で市税収入は632億円から577億円と55億円減少しました。本年は臨時財政対策債56億円を発行し、財政調整基金から56億円繰り入れて予算を組みましたが、この財政調整基金、市のほぼ最後の貯蓄にあたるものですが、あとわずかしか残っていません。来年からは、年100億円以上不足する財源をどのように、確保するのか。臨時財政対策債を発行し続けるのか、痛みを伴う財政再建を行うのか、という問題があります。

市長はおそらく、激しい反発のでる、本当の財政再建を避け、市債を発行し続け、その借金は、新しい市に引き継がせたい、と思っているのでしょう。しかし、この考えには大きな誤まりがります。

まず、市町村合併が、実現した場合、地域の文化の消失、住民自治の消滅という取り返しのつかない事態が生じます。市域が広すぎると、住民にとって困った事態が生じても、行政に住民の訴えを届かせることができなくなります。参政権という観点から見ても、議員の数を減らしすぎると、議員になることが非常に難しくなり、事実上普通の市民の被選挙権が奪われます。これは選択肢がなくなることを意味し、選挙制度そのものの崩壊につながります。

市町村合併が実現しなかった場合、吹田市民には莫大な借金が残される上に、開発された莫大な万博記念公園のインフラ整備をしなくてはならなくなり、市財政は極端に悪化します。市の教育や福祉は、極端にまで切り詰めなくてはならないでしょう。そして私達はどちらのケースでも万博記念公園を失います。

万博記念公園は、吹田の北部を過度の開発から守り、あるいは、ヒートアイランド現象をやわらげ、市民に憩いの場、そして文化に触れる場を提供してきました。この万博記念公園の解体は何としても避けなくてはなりません。

また、万博記念公園は、万博の歴史があるからこそ守られていることを再認識するべきです。この意味で、万博当時からの建物、国立国際美術館やEXPOホールの解体は何としても防がなくてはなりません。これらの建物は、美観的にも、また利用可能性という意味でもすぐれた建物です。また、設計者の川崎清先生自身が、恒久使用のために建てた物で、阪神淡路大震災でビクともしていない、と仰っています。


私は、これらの万博の文化施設は、市民の考えを確認した上で、北摂の自治体、あるいはさまざまな学術研究機関の力をお借りしながら吹田市が維持して行くべきだと思っています。市長は、とんでもない地元負担が必要な開発計画を2期目の公約にしていますが、この場所で本当に必要なのは、開発ではなく、環境保全と文化施設の維持ではないでしょうか。
参照:国立国際美術館跡地利用を考えるメール会議ホームページ
(http://banpaku.circle.ne.jp)

 

中村鋭一さんが万博記念公園を守ろうと講演されました

3月21日千里市民センター大ホール で、「万博記念公園の未来を考える シンポジウム」が 万博記念公園の 文化施設保存・活用を求める市民の会 の主催で開催されました。

元参議院議員で政治評論家の中村鋭一さん。 や、国立国際美術館の設計者の川崎清先生 芦屋市のルナホールの設計者で、中の島 公会堂の保存活動にも尽力された山崎泰孝 先生らが、万博記念公園の文化施設がもつ 可能性についてお話くださいました。

集まった多くの市民の皆様からも ぜひ、万博当時の建物を保存して欲しい。 北摂で数少ない美術館として活用して欲しい 万博記念公園の開発に反対です。という明確なご意見をいただきました。


岡本敏子さんからもメッセージが届きました

万博記念公園は日本には珍しい、ひろびろとしたスペースと、豊かな緑を持つ貴重な場です。1970年国をあげてもりあがった万国博の思い出が、このような形で保たれていることは、日本の誇りです。  これからも文化ゾーンとして人々に愛され続けてゆくように、万博記念公園の文化施設保存・活用を求める市民の会の皆様の活動に期待します。

 

ディーゼル車が吹田市を覆う (梅田貨物駅の吹田市への移転は回避可能です)

梅田貨物駅の吹田市への移転に関し、現在環境アセスメントが行なわれています。市民からの意見書が11,014通も提出されたことでも明らかなように、多くの市民が、ディーゼル車の市内通行を増加させるこの移転に強い不安を覚えています。しかしながら、阪口市長は三月議会で、従前から吹田市が求めてきた大阪市内での二分の一受け入れが確約されることと、市内の環境対策、そして議会の合意という条件をつけて、受け入れを明言しました。

市長の立場は、一見環境に強く配慮しているように見えますが、市長が求めて行くとしている環境対策は、専用道路の全面地下化など、鉄建公団自身が技術的に難しいとすでに述べているものです。また新御堂筋沿線、中央環状線沿線の渋滞・大気汚染についての対応にはなっていません。そしてこの高いように見える他の二つのハードルも、議会の現状の勢力分布、あるいは市長は大阪市が何らかの約束を文書ですることで二分の一受け入れという条件が満たされるとしていることから、比較的短期間でクリアーされる可能性があり、吹田市へ貨物駅移転が行われてしまう危険性がますます高まっています。


現在貨物駅のある、梅田北ヤードは阪神高速の出入り口のすぐ側にあり、交通至便の地です。それを交通網の未発達な吹田市に移転することは各トラックにとって大幅な時間のロスを強い、燃料、無駄づかいと効率の低下、大阪全体の環境悪化をもたらします。

また、商業施設の需要も、オフィス需要も低迷している今 北ヤードの土地を売却しても、移転にかかる諸費用を差し引けば、旧国鉄債務を償還、旧国鉄労働者の年金にあてられる額はごくわずかで、北ヤード開発の公益性は大変小さいといわざるを得ません。

また吹田市としても吹田操車場跡地開発で経済的メリットを得られる可能性は、ほぼないといっていいでしょう。

現在吹田市の子供達の5%近くがぜんそくで、その割合は近年増加しています。私は吹田市の市長であれば、吹田市の市民を守るために貨物ターミナル受け入れ反対の立場に立って他団体と協議しなくてはならないと思います。

鉄建公団も移転で経済的メリットが発生しなければ移転を行わないとしており、吹田市民が明確に移転反対の意思を示し続ける限り、この移転をとめることは可能なのです。

焼却炉が吹田市の財政と環境を食い尽くす

市長は3月議会でも、現在より、能力を3割も増強した日処理能力600トンの焼却炉計画を進めることを確認しました。さまざまな新聞で、ゴミ量が減れば、一期目の能力400トンで建設をやめる、といわれていますが、そのケースは全く現在まで検討されていないことが明らかになりました。市民に目隠しをしながら膨大な投資を行なう旧態依然とした公共事業のあり方が見えてきます。

ゴミ焼却能力については、新工場では現在の能力450t/日を600tにまで増強することになっていますが、この前提となるゴミ発生量の増加の最大の原因は、ダイオキシン対策の強化により、産業廃棄物処理業者が自分たちの焼却炉で燃やせなくなったゴミを、吹田市に持ち込もうとしていることにあります。

ところが、法律、条例上は、吹田市はこのような業者のゴミを受け入れて処理しなくてはならない責任はありません。処理業者は本来、自分たちの力で新炉を建設する義務があるのです。市民の税金を使って、処理業者の負担するべき費用を肩代わりしようとしているのが、現在の吹田市であり、それを市民には一切、情報開示していま せん。市民が排出している家庭系ゴミについては、ここ10年、 ほとんど増加しておらず、今後の環境意識の向上や、人口の 減少、高齢化を考えた場合、今後、ゴミ量は減少すると考えられます。 大阪府の計画でも平成22年度までにゴミ焼却量を20%近く削減する事になっています。

 

建設コストについても大きな問題があります。吹田市案では、日処理能力1tあたり9000万円の建設費になっていますが、大阪市の舞洲工場でも6500万円、愛知県豊橋市では4000万円、民間のゴミ発電工場では1500万円でできています。なぜわざわざこれほど高額なゴミ焼却炉を導入しようとするのか、阪口市長の倫理観が疑われます。

このゴミ処理計画は現在紙ゴミさえ分別されていない事業系ゴミの減量さえ考慮しておらず、森林資源の維持や地球温暖化への対応という観点からも見直しが必要です。

市長は、この焼却場の建設について、最初の400トンの炉が完成した時点でゴミが減っていたらそれ以上の建設を止めるといっていますが、事業系ゴミの減量に本気で取り組んでいない市政の下では、そんなことが起るはずもありません。三月議会の私の質問で、吹田市が400トンで止めるケースを全く想定せず、コスト試算もしていないことが明らかになりました。またもや市長は口だけなのです。

市長はとうとう、当初市民が参加できるという説明をしていたゴミ焼却施設検討委員会を庁内組織にしてしまい、市民に一切情報を明かさないで手続をすすめはじめました。市民参加を標榜する阪口市長は、ほんとうに市民にとって重要な、大きな税金の使途が決定される問題については、市民に口をはさませないことが明確になりました。


市議会議員活動の終わりに

3月議会ではこれらの項目の他に、南千里駅東側のマンション建設に関する経緯など、10項目以上にわたって質問をいたしました。

この議会の最後に私の議員生活締めくくりの挨拶を次のようにいたしましたので、どうぞお読み下さい。市民の皆様。本当に私を市議会に送っていただき有難うございました。四年間精一杯働けました。


私が政治家になりたい、と思った事件が二つありました。一つは薬害エイズ事件、もう一つがダイオキシン問題でした。どちらも経済優先の社会の中で人の命が奪われていった事件で、私は心の中に耐えがたいきりきりとした痛みを感じました。これはどうにかしなくてはならない、社会を変えたいと願いました。

今日私は吹田市について同じように感じています。この地球は今、二酸化炭素による温暖化などにより、大きな危機にあります。私達にはそれを何とかしてくいとめ、子供達が生きていける環境を残す責任があります。ところが35万市民の30年間のゴミの処理方法が、市民にはまったく情報を開示されないまま、事業系ごみの紙ゴミの分別さえ視野に入れないでつくられようとしています。これは私達の子供の命を奪う行為です。

梅田貨物駅の吹田市への移転についてもそうです。大企業には移転をさせたい理由はさまざまあるでしょう。しかし、新御堂を含め、道路脇の人達にとってディーゼル車がくることは、いのちが危険にさらされることです。そんな人達を守るのが吹田市の責任なのではないですか。

人は亡くなる時、宮沢賢治の言葉によると、思い残し切符をのこしてゆく、未来に希望を托してゆく、この思いはいのちが形をかえたものです。万博記念公園の文化施設には、日本人の限りない思いが託されている、これを壊すこと、これは人間の命を踏みにじる行為です。

私は、この人間のいのちが踏みにじられる現実を見て、なんとしてもこの吹田市政は転換しなくてはならないと強い思いをかんじます。これが私の4年の議員生活の答えです。四年間皆様本当に有難うございました。

 

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